正規部分群の定義

定義 1 (正規部分群). を群の部分群とする. が任意の共役作用で不変, すなわち任意のに対して

が成り立つときの正規部分群(normal subgroup)であるという. このことをと表す.

定義からわかるようにアーベル群の部分群は全て正規部分群である. また群の部分群としてを考えるとこれらは常にの正規部分群である. を自明な正規部分群という.

定義 2 (単純群). 自明でない群の正規部分群がのみであるとき, は単純群(simple group)であるという.

特性部分群の定義

定義 3 (特性部分群). を群の部分群とする. 任意のに対して

が成り立つときの特性部分群(characteristic subgroup)であるという. このことをと表す.

内部自己同型写像は自己同型写像の特別な場合なので, 特性部分群は正規部分群である. また, 自明な正規部分群, は特性部分群でもある.

しばしば特性部分群であることを記号と表すが, 包含関係をより明らかにするためにを用いることにする.

正規部分群と特性部分群であることの同値な条件

正規部分群であることの条件は, より簡潔な条件へと言い換えることができる. 特に次の命題の2. はよく用いられる.

命題 4 (正規部分群であることの同値な条件). の部分群に対して, 以下の条件は全て同値である.

  • の正規部分群である.

  • 任意のに対してである.

  • 任意のに対してである.

証明. 1. ならば2. は定義から直ちに従う.

  1. が成り立つとき, 3. が成り立つことを示す. 仮定より, 任意のに対してであるからとなるを取れる. よってとなるのでである. 逆にをとる. このときであるから, となるを取れる. よってとなるのでである. 以上より3. が成り立つ.

  2. が成り立つとき, 1. が成り立つことを示す. 任意のに対してであるから, となるを取れる. よってであるからである. 同様にして任意のに対してであるから, となるを取れる. よってであるからである. ◻

命題 5 (特性部分群であることの同値な条件). の部分群に対して, 以下の条件は同値である.

  • の特性部分群である.

  • 任意のに対してである.

証明. 1. ならば2. は定義から直ちに従う.

  1. が成り立つとき, 1. が成り立つことを示す. 任意のに対して, は全単射であるから, 任意のに対してである. よって任意のに対してであるからである. よってなのでの特性部分群である. ◻

正規部分群と特性部分群の共通部分と積

命題 6 (正規部分群の共通部分と積).

  • の正規部分群の族とする. このときの正規部分群である.

  • の正規部分群とする. このとき積の正規部分群である. さらにの正規部分群である.

証明.

  • の部分群であることは[部分群の定義:命題 7]より分かる. , とすると各の正規性から, 任意のに対してである. すなわちとなることよりの正規部分群である.

  • の正規部分群なのでが成り立つ. [部分群の定義:命題 10]よりの部分群である. さらに, に対して

なのでの正規部分群でもある. 次にの正規部分群であることを示す. に対して

となるがの正規部分群であるからである. よってだからの正規部分群である.

命題 7 (特性部分群の共通部分と積).

  • の特性部分群の族とする. このときの特性部分群である.

  • の特性部分群とする. このとき積の特性部分群である.

証明.

  • 任意の, に対して各の特性部分群であるから, 任意のに対してである. すなわちとなることよりの特性部分群である.

  • の特性部分群なので特に正規部分群でもある. よっての部分群である. さらに任意の, に対して

なのでの特性部分群でもある.

正規部分群の直積

命題 8 (正規部分群の直積は正規部分群). をそれぞれ群の正規部分群とする. このとき直積の正規部分群である.

証明. 任意の, に対して

なのでの正規部分群である. ◻

例 9. 特性部分群の直積は特性部分群になるとは限らない.

例えば自明でない群の特性部分群として, をとりを考える. 自己同型写像と定めると, であるからである.

正規部分群の非推移性と特性部分群の推移性

命題 10.

  • ならばである.

  • ならばである.

証明.

  • 任意のに対しである. よってへ制限した写像の自己同型写像である. すなわちであって, からとなる. 以上よりの特性部分群である.

  • 上のとして内部自己同型写像を取ればよい.

例 11. ならばは成り立つとは限らない.

例えば4次対称群の正規部分群としてクラインの四元群, の正規部分群として互換で生成される位数2の巡回群をとることができる. しかしで生成される部分群はの正規部分群ではない.

指数2の部分群は正規部分群

命題 12 (指数2の部分群は正規部分群). を群, の指数2の部分群であるとする. このときの正規部分群である.

証明. による左剰余類分解と右剰余類分解を考えると, 指数が2であるということから剰余類の数は2つである. として

が成り立つ. 非交和であることからに対してが成り立つのでである. 特にのときもは成り立つのでの正規部分群である. ◻

指数が位数と互いに素な正規部分群は特性部分群

命題 13 (指数が位数と互いに素な正規部分群は特性部分群). を有限群, の正規部分群とする. このときが互いに素であるならば, の特性部分群である.

証明. [正規部分群と特性部分群:命題 5]より, 任意のに対してであることを示せばよい. , とおく.

任意のに対しての位数はの位数と等しく, Lagrangeの定理([剰余類とLagrangeの定理:定理 7])よりを割り切る. ここで剰余群を考える. の位数をとするとLagrangeの定理よりを割り切る. さらにの位数をとすると

であるからを割り切る. 特にを割り切るので, も割り切る.

以上よりも割り切る. しかしは互いに素なのでである. すなわちであってである. ◻

このように有限群の部分群で位数と指数が互いに素であるものはHall部分群(Hall subgroup)と呼ばれる.