群の作用の性質
定義 1 (推移的な作用). 群が集合に作用しているとする. あるが存在してとなるとき, すなわち
となるときこの群作用は推移的(transitive)であるという.
定義 2 (忠実な作用). 群が集合に作用しているとする. その置換表現が単射であるとき, すなわちとして
が成り立つとき, 群作用は忠実(faithful)であるという.
定義 3 (自由な作用). 群が集合に作用しているとする. 単位元による作用以外に不動点を持たない, すなわちとして
が成り立つとき, 群作用は自由(free)であるという.
定義から分かるように群の作用が自由ならば忠実である.
定義 4 (正則作用). 群が集合に作用しているとする. その作用が自由かつ推移的であるとき, 群作用は正則(regular)であるという.
群の作用の例
例 5 (正則作用). を群とする. としては自身にによって左から作用する. この作用の置換表現はでありこれを左正則作用(left regular action)という. Cayleyの[対称群の定義:定理 4]の証明で構成した準同型写像はこの左正則作用である.
また, は自身にによって左から作用する. この作用の置換表現はでありこれを右正則作用(right regular action)という.
左正則作用と右正則作用はともに正則な作用である.
例 6 (剰余群への作用). を群, をその部分群とする. は剰余類に
によって作用する. この作用はwell-definedである. つまり代表元の取り方によらず定まる. 実際, とするとであって
なのでが成り立つ. この作用の置換表現はである.
この作用は推移的であるが忠実な作用ではない.
この置換表現の核を考える. であることはが恒等写像, すなわち任意のに対してが成り立つことなので
ここではの正規核([正規核と正規閉包:定義 1])である. このことからがの正規部分群であることが分かる.
例 7 (対称群による作用). を集合として対称群はに
によって作用する. この作用の置換表現はである.
のとき, この作用は推移的かつ忠実な作用であるが自由な作用ではない.
例 8 (べき集合への作用). が集合に作用しているとする. このときの部分集合に対して
と表す. するとのへの作用をで定めることができる. この作用の置換表現はである.
例 9 (行列群の作用). を実数体上の次正則行列全体の成す群とする. このときはに対して
によって作用する. この作用の置換表現はである. このときは線形写像である. このように線型空間への作用の置換表現のうち, 作用が線形写像として定まるものを線型表現(linear representation)という([群の線形表現:定義 1]).
この作用は忠実な作用である. 推移的, 自由な作用ではない. ただし原点を除いたへの作用として考えると忠実な作用になる.
参考文献
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