数学を始めるにあたって、扱う数学的な対象を定める必要がある。その方法のうちの一つで、現代数学において最も一般的な方法が、集合という概念を基礎とする方法である。集合が扱う対象の全てであり、集合の間には一方が一方に属するという関係が定められる。そして集合とは、全ての集合についてそれが属するか属さないかがどちらか一方に定まるものをいう。

素朴には、集合とはある条件を満たす「もの」の「集まり」のことであるが、どんなものの集まりも直感的にすべて集合と考えると、例えばある集まりに属しかつ属さないものが存在するという矛盾が生じる(ラッセルのパラドックス)。こうした矛盾が生じないように、ある集合に属するか属さないかはどちらか一方に定まるという考え方のもと、何が集合であるかを明確に定義して議論の出発点とする。この議論の出発点となる定義を公理とも呼ぶ。

公理として何を採るかには任意性があり、採用する公理系によってある命題を証明できるかどうかが異なることがある。ある公理系のもとでどんな命題が証明できるかできないか、ある命題はどんな公理系のもとでなら証明できるか、ある公理と公理は独立か、といった論理的な関係を詳らかにすることも集合論においてなされる。こうした現代的な集合論をその公理的に整備された側面を強調して公理的集合論、これに対比させて整備される前のものを素朴集合論と呼ぶことがある。

ここではZFC(ツェルメロ=フレンケル公理系(ZF)に選択公理(C)を加えたもの)を前提とし、公理からの導出する過程は省略して、基本的な集合の存在や性質について概観する。導出の過程など細かい議論は別ページにまとめる。

集合の帰属

2つの集合に対し、関係が定められてが真であるとき、 に属するといい、 を集合 の元や要素と呼ぶ。

集合の相等

2つの集合 が等しいことを と表し、以下のように定義する(外延性公理)。

すなわち、 の任意の元はに属しかつの任意の元は に属するとき、かつそのときに限り

下で説明する包含関係を用いれば、

すなわち、の部分集合でありかつの部分集合であることと同値。

は反射律、対称律、推移律を満たす、すなわち

集合の相等は元の重複や順序によらない。すなわち、

集合の外延的表記

集合は元がすべて同じなら等しいことから、集合はどんな元が属しているかのみで一意に特徴付けられる。そこで、集合の元をすべて書き出すことにより、その集合を表すことができる。これを外延的記法(roster notation)という。

(例) を元として持ち、それ以外の元を持たない集合 は、 などと表す。 からまでのすべての整数を元として持ち、それ以外の元を持たない集合 は、 などと表す。間が容易に推測できるときには、このようにで省略することがある。

空集合の存在

元を1つも持たない集合が存在する(空集合の公理)。すなわち、。これを、空集合(empty set)という。これは外延性公理より一意的であるので、 や、 と表す。

(例)

無限集合の存在

元の個数が有限でない集合が存在する(無限公理)。

(例)自然数全体の集合、実数全体の集合など。

集合の大きさ

集合はどんな元が属しているかのみで一意に特徴付けられ、その重複はないことから、集合が与えられると、 の元がどれほどあるかを数えることができる。これによって集合の大きさを定めることができる。こうした量としてまず元の個数がある。個数とはとの全単射が存在するときのことであって、こうしたは存在すれば一意である。ただし空集合の元の個数はとする。個数が定められる集合を有限集合、そうでない集合を無限集合と呼ぶ。

無限集合に対しても個数を一般化した濃度によって集合の大きさが与えられる。集合 の濃度(有限集合の場合は個数)は、 などと表す。(CardはCardinalityの略)。

集合の包含

2つの集合 を考える。次の条件が成り立つとき、 の部分集合(subset)である、 に含まれる、 を含むといい、 と表す。

すなわち、すべての の元が に属するとき、またそのときに限り の部分集合である。

集合 とその元 に対する述語 が与えられたとき、すなわち が真であるようなの全体からなる集合 が存在する(分出公理)。このことから任意の集合に対して確かに上の定義を満たすような部分集合が存在し、また述語を用いて実際に作ることができる。このように構成された部分集合 に対して、 を全体集合と呼ぶ。議論の中で考える集合をある集合 の部分集合のみに明示的に限るとき、 が全体集合となる。

定義から、全ての集合は部分集合として自分自身と空集合を持つ。

かつ 、つまり よりも「小さい」とき、 の真部分集合であるといい、 と表す。

集合の内包的表記

集合に関してこれを部分集合に持つ全体集合を定めれば、の元に対する述語を用いて特徴付けられる。そこで、全体集合と述語の組を定めることにより、その集合を表すことができる。これを内包的表記(set-builder notation)という。 のように表す。

(例)

べき集合(冪集合)の存在

集合 に対して、 の任意の部分集合を元に持ち、それ以外の元を持たない集合が存在する(べき集合の公理)。すなわち、これを のべき集合という。これは に対して一意的なので、 などとかく。

(例) に対し、そのべき集合は8個の元をもつ以下の集合である。

空集合 自身も の元であることに注意する。

基本的な集合を表す記号

基本的な集合に対しては、特定の記号が一般によく使われる。

自然数全体の集合は 、整数全体の集合は 、有理数全体の集合は 、実数全体の集合は 、複素数全体の集合は で表す。

これらの包含関係は である。