群の生成系の定義
定義 1 (部分集合が生成する部分群). 群の部分集合に対して, の部分群でを含むもののうち(包含関係に関して)最小のものをにより生成される部分群(subgroup generated by )といいで表す. このときを生成系(generating set), の元は生成元(generator)という.
以下の命題により, 任意のに対してにより生成される部分群は存在して, 上の定義はwell-definedであることが分かる.
命題 2 (生成される部分群のwell-defined性). 任意のに対して, を含む最小の部分群は存在して, とすると以下で与えられる.
証明. はの部分群なので[部分群の定義:命題 7]よりはの部分群である.
また, 任意のに対してなのでであることが分かる.
さらにの任意の元に対してであるから, はを含むの部分群の中で最小のものである. ◻
特にが空集合のときはである. 群の部分集合により生成される部分群はであるがこれを集合の括弧を省略して, 単にと表す. また, の部分集合の和集合により生成される部分群はと表す. 同様に任意個の部分集合の族の場合もと表す.
特にの生成系として有限集合を取ることができるとき, は有限生成(finitely generated)であるといい, を有限生成群(finitely generated group)と呼ぶ([有限生成群:定義 1]). また有限生成群のうち, その生成系として一元集合を取ることができるとき, 単項生成であるといい, これを巡回群(cyclic group)と呼ぶ([巡回群:定義 1]).
生成する部分群の具体的な表示
命題 3 (生成する部分群の具体的な表示). 群の空でない部分集合に対し, により生成される部分群は次のように表される.
証明. 右辺の集合をとして, が[群の生成系:定義 1]を満たすことを示す. まずがを含む部分群であることを示す. はを含んでいることは明らかである. 任意のはを用いて
と表すことができて, である. また
となるので[部分群の定義:命題 4]よりはの部分群である.
次に最小性を示す. 示すべきことは, を含むの部分群をとしたときとなることである. とすると, と表される. 仮定よりなので各に対しである. 今, はの部分群なのでに対してでもあり, 演算について閉じていることからが言える. 以上より最小性が示された. ◻
上の表示では相異なる元と限らないことに注意する. 例えばに対して, である.
生成系の性質
命題 4 (生成系の性質). 群の部分集合に対して, 以下が成り立つ.
証明.
-
は自身を含むの部分群であるからである. また, ととればである.
-
なので, よりである. すなわちはを含むの部分群であるから, 最小性よりである.
-
, なので2. よりかつである. よってである.
◻
群の極小生成系
定義 5 (極小生成系). 群の生成系が極小生成系(minimum generating set)であるとは
が成り立つ, すなわちの任意の真部分集合がを生成しないことである.
例 6 (の極小生成系). 加法群はから生成される巡回群である. はから生成される部分群でもある. はいずれもの極小生成系である. またにおいてで生成される部分群はである.
上の例でも分かる通り群の極小生成系は濃度は一意に定まらない. また, 有限生成群に対しては極小生成系が存在することが分かるが, 無限生成群に対しては極小生成系が存在するとは限らない.
補足 極小生成系は線型空間における基底にあたるものである. 群の極小生成系は濃度は一意に定まらないが, 線型空間の基底は濃度が一意に定まる.
非生成元
定義 7 (非生成元). 群の元について,
が成り立つとき, をの非生成元(non-generating element)という.
命題 8 (非生成元は極小生成系に属さない). が非生成元であるならば, はの任意の極小生成系に属さない.
証明. が極小生成系を持たない場合成り立つことは分かるので, が極小生成系を持つときを考える. を非生成元として, がの極小生成系に属すると仮定する. であって, は非生成元であることから
となる. しかしであるから, これはが極小生成系であることに矛盾する. ◻
の非生成元全体の集合はFrattini部分群([Frattini部分群:定義 1])と一致し, さらにこれは正規部分群となる([Frattini部分群:命題 2]).
参考文献
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