巡回群

定義 1 (巡回部分群, 巡回群). 群に対して, あるが存在してとなるとき, を巡回群(cyclic group)という. また, の部分群で巡回群であるものをの巡回部分群(cyclic subgroup)という.

生成系により生成される群の具体的な表示([群の生成系:命題 3])より巡回群の元は整数を用いてと表すことができる. ただしこの表示は一意的とは限らない.

巡回群はアーベル群

命題 2. 任意の巡回群はアーベル群である.

証明. の生成元をとするとの任意の元は整数を用いてと表すことができる. よってに対して

であるから可換であることが分かる. ◻

群の元の位数

定義 3 ((群の元の)位数). 群の巡回部分群について次の二つの場合がある.

  • ある整数となるとき, を満たす正の整数のうち最小のものをとすると巡回部分群は相異なる個の元で

となる. このの位数(order)という. このときならばで割り切れる.

  • 任意の整数に対してとなるとき, 巡回部分群は次の形で表される無限群になる.

このときの位数はと定義する.

証明.

  • まず巡回群がの形で表示されることを示す. 任意の整数に対してを考える. このときとなる整数が存在して

となる. さらにに対してと仮定するととなり, なのでの最小性よりが分かる. よっては位数の群であることが分かった. また, のときとなる整数が存在し, となる. の最小性よりである. よってとなるのでで割り切れる.

  • と仮定するとであるが仮定よりである. よってならばなので, は無限群であることが分かる.

群の位数([群の定義:定義 8])と用語が同じなので違いに注意する必要がある. 対偶を考えれば次のことも分かる.

系 4 (有限群ならば元の位数は有限). を有限群とする. このとき任意のの位数はではない.

巡回群の部分群

命題 5 (巡回群の部分群は巡回群). を巡回群とする. このときの部分群は巡回群である. 特にが有限群ならの任意の約数に対して, 位数の部分群が存在する.

証明. まずの部分群は必ず巡回群になることを示す. とする. の部分群とする. を生成元とする巡回群なのでで考えればよい. このときであることに注意するとを満たす正の整数のうち最小のものを取ることができる. すると任意のに対してと表すことができるがの部分群なのでより

である. の最小性よりである. すなわち任意のの元はの形に表されるのでとなり巡回群である.

次にとしての約数とする. するとに関して

であるからは位数の部分群である. ◻

巡回群の一意性

巡回群は同型を除いて一意であり, その位数のみで特徴づけられる.

命題 6 (巡回群は同型を除き一意). を位数の巡回群であるときである. が無限巡回群ならばである.

証明. の生成元をとする. で定めるとこれは全射準同型写像である. 実際,

なので準同型写像で全射はが巡回群であることから明らか. またについて, が位数の巡回群であるとき

であってのときで割り切れる. なぜならとすると

なのでこれを満たすは0に限られるからである. 逆になので. に準同型定理([準同型定理と例:定理 1])を適用すれば同型

がわかる. 一方が無限巡回群のときを満たす整数に限られる. つまりなのでは全単射であることが分かる. よってこのときである. ◻

巡回群の直積が巡回群となる必要十分条件

命題 7 (巡回群の直積が巡回群となる必要十分条件). をともに非自明な有限巡回群とする. このとき

証明. [巡回群:命題 6]を用いることで示すことは

とできる. まずが互いに素であるとき, 次の同型を示す.

準同型写像で定める. まずが全射であることを示す. 任意にを取る. は互いに素なのでを満たす整数が存在する. このを用いて

が成り立つのでとなる. よっては全射である. また, であるので準同型定理よりが次の同型を導くことが示された.

逆にが巡回群であるとする. このとき生成元をとする. の最小公倍数をとおくと, であるからで割り切れ, である. 一方, の最大公約数をとすると,

となる. これを満たすに限られるのでは互いに素である. ◻

上の命題では有限巡回群同士の直積について考察した. 無限巡回群を含む場合を以下の例に示す.

例 8. 二つの無限巡回群の直積は巡回群ではない. の生成元とすると, となるが取れる. このときとなるがを生成しないため, の生成元を一つにとることはできず, 巡回群でない.

例 9. 無限巡回群と位数の有限巡回群の直積は巡回群でない. 仮に巡回群だとするとは無限群なのでが成り立つ. よっての位数有限の元は単位元に限られる. しかしは単位元でないがとなり位数であるから, これは矛盾である.