自己同型群の定義

定義 1 (自己同型群). 群の自己同型写像全体の集合は写像の合成を演算として群をなす. これをの自己同型群(automorphism group)という.

自己同型群の単位元は恒等写像である. の逆元はその逆写像で, これが再び自己準同型写像であることは[準同型写像の定義:命題 11]から分かる. また, の積も自己同型写像であることは[準同型写像の定義:命題 6]から分かる.

命題 2. ならばである.

証明. 仮定より同型写像が存在する. このときは逆写像を持つ. 写像

を考える. は同型写像の合成なので同型写像である. また, に対して

であるからは準同型写像である.

次にが全単射であることを示す. まずとすると

であるからとなる. よっては単射である. 次にをとると, とすればであるからは全射である. 以上よりが成り立つ. ◻

自己同型群の例:無限巡回群

命題 3 (無限巡回群の自己同型群). 加法群の自己同型群についてである.

証明. とするとの生成元によって決定される. さらには全射準同型なので

すなわちの生成元となるのでである.

  • のとき任意のに対して

であるからこれは恒等写像である. これをとしておく.

  • のときは任意のに対して

となる. この準同型写像をとおく. ここでかつである.

以上よりが分かる. ◻

自己同型群の例:有限巡回群

命題 4 (有限巡回群の自己同型群). を位数の巡回群とするときである.

証明. とする. このときは生成元の行先を定めることで決定されることに注意する. , で定める. このとき以下を確かめることで題意が示される.

  • はwell-definedである. つまり代表元によらず定まり, .

  • は全単射な群準同型である.

  • まずが代表元によらず定まることを示す. と仮定するとで割り切れる. このときを用いると

すなわちが分かる. つまりは代表元によらず定まる. 今の代表元かつと互いに素であるものとして取ることができる. 次にについてが全単射であることを示す. に対してとするとなのでである. の位数はなのでで割り切れる. と互いに素なのでで割り切れる. このことからとなるからよりの単射性が分かる. また, となるが存在する. このときとすれば任意のに対して

となるからが全射であることも分かる. 以上より.

  • が群準同型であることは任意のに対して

であることから分かる. 次にが単射であることを示す. に対して, つまりが恒等写像であるとするとなので. [準同型写像の像と核:命題 3]よりは単射. また, 任意ので表されるがの生成元になっているのでと互いに素である. よってより. すなわちは全射.

以上よりが群同型を与えることが分かる. ◻

内部自己同型群と外部自己同型群

定義 5 (内部自己同型群). 群の内部自己同型写像([準同型写像の例:例 2])全体

の内部自己同型群(inner automorphism group)という.

アーベル群の内部自己同型は全て恒等写像になるため, は自明な群となる.

命題 6 (内部自己同型群は部分群). 内部自己同型群の部分群である.

証明. まず恒等写像であるから. 次にとすると任意のに対して

であるから. 最後にとすると任意のに対して

であるから. 以上よりの部分群である. ◻

命題 7 (内部自己同型群は正規部分群). 群の内部自己同型群は自己同型群の正規部分群である.

証明. の部分群であることは[自己同型群:命題 6]より分かる. とする. 任意のに対して

であるから. よっての正規部分群である. ◻

[自己同型群:命題 7]より剰余群が定義できる.

定義 8 (外部自己同型群). 剰余群の外部自己同型群(outer automorphism group)といい, と表す.

内部自己同型群の性質

命題 9 (内部自己同型群と中心の関係). 群の中心と内部自己同型群についてが成り立つ.

証明. 共役作用の置換表現を考える. の核を求めると, ならば任意のに対してが成り立つので. 逆にならば任意のに対してであるから. よってが分かる. または全射であるから, 準同型定理([準同型定理と例:定理 1])からが従う. ◻

直積群の自己同型群

命題 10 (直積群の内部自己同型群). 群の直積群の内部自己同型群について が成り立つ.

証明. [自己同型群:命題 9]より

が成り立つ. ここで中心の直積について

である. したがって

が成り立つ. ◻

一方, 自己同型群については限られた場合のみ成り立つ.

命題 11. 有限群の位数が互いに素であるときが成り立つ.

証明. 任意のに対して, 射影, および包含写像を用いて

と定める. このときの位数が互いに素であることから, 準同型写像は自明な写像になる. よって任意のに対して

すなわち

が成り立つ.

次に写像が同型写像であることを示す. とすると

であり

同様にが成り立つ. よってが成り立つからは準同型写像である. であるからが成り立ち, は準同型写像. またとするとであるから任意のに対して

となる. よってであるからは単射. 最後にをとると,

で定めるとかつであるからは全射.

以上よりが成り立つ. ◻

例 12. のときである. 一方でで自明でないものが存在する.

で定めるとこれは自己同型写像であり, 自明でない. よってである.

より具体的にはである.