通常の化学反応において元素の種類、つまり原子の陽子数は変わらない。化学反応において変化するのは、中心の原子核ではなく外側の電子の数や(量子力学的な)状態である。ここでは、原子の中の電子が取りうる状態の種類とエネルギーの関係、それぞれのエネルギー準位における電子の数について見ていこう。
主殻
原子内の電子はまずいくつかの主殻のいずれかに分類され、これらは主量子数(の整数)によって区別される。エネルギーが低い(≒内側の)方から殻、殻、殻、殻…(順に)と呼ぶ。番目の主殻には個まで電子を収容できる。
(から始まるのは、発見当時殻が一番内側か分からず10個分確保したためである。)
副殻
番目の主殻は種類の副殻から構成され、これらは方位量子数(を満たす整数)によって区別される。エネルギーが低い(≒内側の)方から順番に軌道、軌道、軌道、軌道…(順に)と呼ぶ。番目の副殻には個まで電子を収容できる。
(初め4つはsharp(くっきりとした),principal(主要な), diffused(広がった),fundamental(基本的な)の頭文字であり、その後はアルファベット順にと続く。はアルファベットに関する歴史的な事情から省かれる。)
軌道
番目の副殻は種類の軌道から構成され、各軌道は磁気量子数(を満たす整数)によって区別される。外場がないとき、同じ副殻内の軌道のエネルギー準位は全て同じである。1つの軌道には2個まで電子が収容される。1つの軌道に2つ電子があるときそのペアを電子対、1つのみ電子があるときその電子を不対電子と呼ぶ。
マーデルング則
構成原理、増成原理、aufbau principleとも呼ばれる。電子はエネルギー準位の低い軌道から順に入っていくため、それぞれの軌道同士のエネルギー準位の高さの順序を知りたい。/が等しい2つの軌道については、/が小さい軌道の方がエネルギー準位は低い。しかしそれぞれが異なる軌道のどちらがエネルギーが低く、どの副殻から電子が埋まっていくかは直ちには分からない。マーデルング則はこれについての経験則である。
(1) が小さい副殻から埋まっていく (2) が等しい副殻のうち、が小さい副殻から埋まっていく
つまり、電子は概ねの順に埋まっていくということである。ただし、以下のような場合に例外があることに気を付ける必要がある。 ・閉殻・半閉殻による安定化の効果でエネルギー準位が入れ替わり、マーデルング則の順序で前の副殻に入っていた電子の一部が後の副殻に入る場合 ・副殻同士のエネルギー差が小さく、電子が埋まっていく中でエネルギー準位が入れ替わり、前の副殻が埋まりきらないまま後の副殻に電子が入る場合 ・電子数が多く相対論効果が現れる場合 など
パウリの排他律
量子力学において、2つ以上のフェルミ粒子が同一の量子状態を占めることはできないことが導かれる。電子はフェルミ粒子であり、量子状態を表す数として軌道を特徴づける主量子数、方位量子数、磁気量子数に加え、スピン磁気量子数を持つ。
スピンとは電子が持つ内部自由度で、角運動量と同じ次元を持つ物理量である。電子のスピンの大きさはであり、向きはある軸を決めた時にその軸に沿った向き()と逆向き()のどちらかである。図示する時などは上向き↑/下向き↓で表現される。
よって、が等しい同一の軌道には、の異なる、つまりスピンの向きが互いに逆向きの電子2つまでしか入ることができない。
閉殻・半閉殻
副殻の軌道が全て電子に占有された状態は、そうでない状態に比べて安定である。これを閉殻という。また、副殻の軌道のちょうど半数が電子に占有された状態は、閉殻ほどではないが比較的安定である。これを半閉殻という。
閉殻は主殻に対して定義することもできるが意義に乏しいので、特に断らない限りは副殻に対してのものとする。
最外殻電子
電子のうち、最も量子数の大きい(≒外側の)主殻に入っている電子を最外殻電子という。これらは最も外側にあるので反応に主に関与する。
参考文献
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