オーキシンは植物ホルモンとよばれる生理活性物質の一種であり、細胞の伸長促進や植物体の構築制御などさまざまな機能を担うことが知られている。オーキシンとはオーキシン活性を持つ物質の総称であるため、オーキシンには化学合成したものも含めいくつか種類がある。代表的な天然のオーキシンはインドール酢酸(IAA)である。その他のオーキシンには側根形成に関わる天然オーキシンのインドール酪酸(IBA)、双子葉植物の除草剤として使われる合成オーキシンの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)などがある。

オーキシンの合成と輸送

オーキシン(IAA)は主にシュートの先端や若い葉などで合成され、基部の方へと一方通行で移動する。これを極性輸送(極性移動)と呼ぶ。これにはオーキシン輸送タンパク質の細胞内における極性分布が関係している。

弱酸であるIAAはpHによって分子の状態が変化する。細胞壁は弱酸性であるため、IAAとの両方が存在する。IAAは細胞膜を受動的に透過し、はAUX1などの輸送タンパク質によって能動的に細胞内へと取り込まれる。

細胞内は中性に近いため、IAAはイオン化しとして存在している。細胞膜上ではを排出するPINタンパク質が基部側に局在しており、は基部側の細胞外へと排出される。

これらによってIAAは細胞から基部側の細胞へと一方向に移動する。

オーキシンの利用

オーキシンは植物において様々な生理活性をもつため、農業などで広く活用されている。天然のオーキシンであるインドール酢酸(IAA)は、光や酸化の影響を受けやすく不安定であり、また極性輸送で移動しやすく局所的に作用させづらいなどの特性があるため、産業では他のオーキシンが用いられている。

植物の一部を切り取り、発根させることで挿し木をおこなう際に、インドール酪酸(IBA)を切断面に塗布または浸漬することがある。IBAはペルオキシソームという細胞小器官でβ酸化によってIAAに変換される。そのため、過剰な濃度になりにくく、極性輸送されにくいため、局所的に使うことができる。また、IAAよりも安定性が高い。

合成オーキシンである 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)は、除草剤として用いられている。2,4-Dはオーキシンの作用を過剰に起こす。双子葉植物は2,4-Dの影響を受けやすいため枯死するが、単子葉植物は2,4-Dを無毒化することができ、取り込む量も少ないため、影響を受けにくい。この特性を活かし、穀類の畑や芝生で雑草を抑える目的で利用される。